ソフトウェア開発プロジェクト関連の書籍で、評判がよく有名な『アドレナリンジャンキー』を読みました。すごい書籍名から感じる方も多いと思いますが、プロジェクトに関わっていると出くわす「あるある」が詰まった本です。ソフトウェア開発に携わる方は、読み物として楽しめる1冊ではないでしょうか。
書評『アドレナリンジャンキー』
本書は全部で48パターンのソフトウェア開発あるあるをまとめた形式になっています。 1章2〜3ページの構成からなり、専門的な言葉も少なくかなり読みやすいです。プロジェクトといえば、常に忙しいことが当たり前で、納期が迫りあくせくチームが動いていることが容易に想像できるのではないでしょうか。「アドレナリンジャンキー」はそのようなソフトウェア開発でありがちなことを面白おかしく紹介しています。
書籍の中で気になったパターンをいくつかご紹介です。目次からタイトルと副題を拾ってみました。
アドレナリンジャンキー
アドレナリン中毒の組織は、猛烈に動き回ることが健全な生産性のあかしだと信じている。
スピード勝負
プロジェクトチームは、一刻も早く誰がいつまでに何をすべきかを決め、すぐにあらゆる必要な行動を取りたいと思っている。
死んだ魚
プロジェクトが始まったその日から、目標を達成する見込みはゼロである。プロジェクトに関わる人のほとんどは、それを知っていながら何も言わない。
関連痛
目に見える問題にとらわれ、根本的な原因を解決しない。
ベンチに人なし
組織をスリム化しすぎて、重要なメンバーが一人かけたら破綻する。
私はソフトウェア開発に携わってまだ長くはないのですが、かなり共感できるな〜と感じました。目次だけのご紹介ですが、文面から現場を想像できる方も多いのではないでしょうか。多くの組織で同じような現象が起きているのだろうな〜と容易に想像できます。
レミングサイクル
一つ、本を読んで自分の経験からしっかりと覚えて起きたいと思った章をご紹介します。『レミングサイクル』について。レミングサイクルとは、本書12章目のタイトルです。この章では「プロセスを調整しろと明記されているのに、プロジェクトチームはあくまでも調整しない標準プロセスを守り続ける」というプロジェクト開発あるあるについて語られています。
多くのプロジェクトではCMMIやSPICE、ISO9000などプロジェクトのプロセス改善プログラムの一環として、開発プロセスの社内基準を設ける企業が多いとされています。これらのプロセスモデルを導入するにあたり、開発チームのメンバーが果たす役割、行うべき活動、作成すべき成果物が定められます。しかし、当たり前ながらすべてのプロジェクトに同じように成り立つわけではないので、各プロジェクトの制約に合わせて調整ガイドラインを設けます。
レミングサイクルはこの調整ガイドラインをプロジェクトチームが必ず守るわけではないことを説明しています。
なぜ守ることができないのか、それはプロセスを調整し、成果物を削ることには勇気がいるからです。プロジェクトに関わる人間には、下記のプレッシャーがつきまとます。
どれか手順を省略したり、要求される成果物の一部を作成しないと決めたりすれば、プロジェクトが失敗したときに批判にさらされる可能性がある。
また書籍では、調整する「労力」についても触れられています。プロジェクトマネージャーは調整が必要と分かっていながらも、他の仕事に終われ、具体的な方法を話し合う暇がありません。結果として「プロジェクトを進める方が容易」なので、調整しない選択を選んでしまいます。
しかし、プロジェクトの本当のニーズにあっていないプロセスに固執すると作業開始は早まるかもしれませんが、完成も早まるとは限りません。やりがちなことですが、しっかりと覚えて起きたいプロジェクトの基本でした。