「ヘッダー入札」(もしくはheader bidding)というフレーズを最近目にするようになりましたが、日本では比較的馴染みのない言葉かと思いますので、どのようなものか自分なりに整理してみました。
ヘッダー入札とはなにか
ヘッダー入札とは媒体の収益改善のための技術です。
もう少し具体的に説明すると、主にSSPが提供しているJava Scriptをウェブサイトのヘッダーに組み込むことでAd Exchangeに広告インプレッションのリクエストを渡す前にSSPがそのリクエストを受けることが可能になります。
なぜ注目されているのか
広告枠の買い付けをよりオープンにすることで、広告主はより質の高い広告枠へ出向できるチャンスが増え、メディアは広告枠単位でのCPM上昇が期待できるからです。
日本でも2010年以降にDSPが利用されるようになってからリアルタイム入札(RTB)が広がりましたが、多くの媒体はウォーターフォール式を採用しているため、まずは純広告やAd Exchangeからのリクエストを確認し、買い付けが無い場合のみ入札が可能となります。以前は今以上にDFP(Google)が圧倒的だったので、メディア運営者も「広告をつける≒Google Ad senseを入れておこう」という認識でした。しかし現在ではより多くの広告事業者が参入し、オープンでフェアな取引をするほど価格が上がる土壌ができつつあります。
メディアにとどまらず業界全体にとっても取引の透明性、健全性が高まることは歓迎すべきことで、そのような背景からヘッダー入札が注目されつつあると言えます。
ヘッダー入札の課題
ただし、現時点ではメリットばかりではなく課題もあり、導入にあたり特にハードルとなりえるものは以下2点です。
1.ページが重くなりユーザービリティを損ねる可能性がある
デジタルマーケティングに携わっている方ならご存じかと思いますが、10以上の広告タグが入っているサイトは既に星の数ほどあり、残念ながらそれがサイトの読み込みを遅くしている一因ともなっています。特にモバイルは通信キャリアが月次の通信容量に制限をかけているので、ユーザーにとっては重大な問題です。サイトが重くて喜ぶ人は通信キャリアを除いていないので、メディア運営者は慎重に検討すべきでしょう。
2.実装に手間がかかる
タグマネージャーや広告イメージタグほど実装が簡単ではないことも多く、複数のヘッダー入札業者を導入するほど複雑になります。現状では一元管理するツールもほぼ無いので気軽に実装やリプレイスするものではありません。
広告の方針を考える良い契機に
ヘッダー入札の良い点は、PVではなく広告枠単位での収益改善が期待できることです。現在では最大手のヤフーニュースでさえ4、5の広告枠を設けるほど「たくさん枠を設置して設ける」ことが当たり前になっています。コンテンツをみたくてアクセスしたページの読み込みに時間がかかったり、執拗にリタゲされた、もしくは公序良俗的にグレーな広告が1ページに複数掲載される現状はユーザーにとって「広告は邪魔なもの」という認識を強めるには十分でしょう。
もちろん、ヘッダー入札はメディア収益改善における手段のひとつにすぎません。それ以上にメディア運営者にとって大切なことは、収益性とユーザビリティのバランスを考え続けることだと思いますし、それが長期的な成功につながると個人的には思います。
<参考サイト>
- ヘッダー入札は「すべてを台無しにしてしまう」のか? そのマネタイズ特効薬の副作用 | DIGIDAY[日本版]
- 最大CPM40%増も。ヘッダー入札はメディアの救世主か? | DIGIDAY[日本版]
- パブリッシャー(セルサイド)から見るプログラマティック取引のトレンドとこれから
※この記事は以前投稿したものの再掲になります